マイクロソフト40周年(2) - MS-DOS

公開:2015-04-07 06:42
更新:2020-02-15 04:37
カテゴリ:マイクロソフト,マイクロソフト40周年,コンピュータの歴史

Windowsより前のPC用OSはMS-DOSである。MSの2つめの成功作だ。

https://upload.wikimedia.org/wikipedia/commons/b/b6/StartingMsdos.png

当時の8Bit PCでのOSはCP/Mがメジャーであった。CP/Mはデジタル・リサーチ社の製品であり、MSもこのOS向けにBASICやMACRO-80アセンブラなどを作っていた。CP/MはPL/M用のOSとしてインテルに提案したが採用されなかったため、自社で販売することになったものだそうだ。これが成功した。

IBM PC用のOSの自社開発を断念したIBMは、OSの開発もMSに依頼しようとした。IBM-PCは8088という16ビットCPUを積んでいたので16ビット機用の新しいOSが必要だったのだ。当時OSの開発の経験がなかったMSはまずデジタル・リサーチを紹介した。8bit PC用のCP/Mを8088に移植することで対応しようとしたのだ。そうすればCP/M用に提供していたソフトウェアをMSは再利用できる。IBMはデジタル・リサーチ社のゲイリー・キルドールと交渉しようとしたが不調に終わった。そのためMS自身が開発することになった。

MSはこのOSをスクラッチでは開発せずにシアトル・コンピュータ・プロダクツの86-DOSを従業員(ティム・パターソン)ごと買収し、これを改良しPC-DOSとしてIBMに供給した。この買収の理由としてMSはOSの開発をしたことがなかったというのが主な理由となっているが、私はそれだけではないと思う。開発する能力はあったと思うが、かなりの短納期だったので、OS開発経験のないMSでは納期に間に合わないからというのもあったのではないかと。

この86-DOSというのはそもそもCP/Mの8086/8088用がなかなか発売されないので、シアトル・コンピュータ・プロダクツのティム・パターソンが半年ほどで作ったCP/M互換OSであった。MSは短期間かつ低価格でCP/M互換OSを手に入れたわけだ。これをIBM-PC用に仕立て上げた。これでMSは成功したのだ。このCP/Mとの互換性というのが大きい。これがなければ膨大なCP/Mの資産が移植されず、IBM-PCもどうなっていたかわからない。

PC用OSはCP/Mの独壇場であり、CP/Mが素直に8086/8088に移植されていればデジタル・リサーチが成功したはずである。なんという運命のいたずらであろうか。デジタル・リサーチはその後CP/M-86を発売するが時すでに遅しであった。

MS-DOSもIBM-PC用以外にも移植・提供された。PC9801もそうだよね。しかしMS-DOSはディスク周りの操作システムという色が強かった。そのためグラフィックなどのハ-ドウェアにアクセスするためのシステムコールが不足していたので互換性という面では十分ではなかった。MS-DOS上で動くプログラムであっても他のPCでは動かないといったことはままあったのである。この互換性問題の解決はWindowsに持ち越されることになる。

MS-DOSのDIR/REN/TYPEコマンドはCP/Mのコマンドの名残だ。このコマンドはWindows 10のコマンドプロンプトでも動かすことができる。