昨日は行政刷新会議の議題に次世代コンピュータプロジェクトが上がっていた。次世代コンピュータプロジェクトについてまとめてみた。
【目的】
・世界最先端・最高性能の次世代スーパーコンピュータの開発・整備及び利用技術の開発・普及
【目標】
・10ペタFlopsのスーパーコンピュータを平成24年までに完成できていること
【期待効果】
・次世代スパコンの研究開発分野において世界最高レベルを維持できる
・次世代スパコンを利用することで研究開発期間の短縮・質の向上をはかることができる
【総予算】
・平成18~24年度(総事業費): 1,154 億円
【体制】
・文科省
・理化学研究所
・筑波大学
・東京大学
・国立天文台
・JAXA
・JAEA
・JAMSTEC
・NII
・計算科学振興財団
・スーパーコンピューティング技術産業応用協議会
・日立製作所
・日本電気
・富士通
【スケジュール】
・システム設計 2006~2008年
・試作・評価 2009~2010年
・実証 2011年~
【プロジェクトの変遷】
このプロジェクトはそもそも、2004年の「情報科学技術委員会 計算科学技術推進ワーキンググループ」にまでさかのぼるようだ。
・計算科学技術推進ワーキンググループの設置
第一回目ですでに、HPCの技術動向について、日立、NEC、富士通が報告を行っている。
資料は下記で読むことができる。
http://www.mext.go.jp/b_menu/shingi/gijyutu/gijyutu2/007/shiryo/05060101.htm
簡単に言うと、富士通はスカラで、NEC・日立はベクトルかな。
海外ベンダは呼んでないみたい(目的からするとあたりまえか)
WGは「将来のスーパーコンピューティングのための要素技術の研究開発プロジェクト」のために立ち上げられた。
でも第2回目でなんと、インテルが呼ばれている!
http://www.mext.go.jp/b_menu/shingi/gijyutu/gijyutu2/007/shiryo/05042701.htm
だいたいこの辺で、大まかな要件がが固まっている。
・演算性能:1-10PFLOPS
・メモリー領域:1-10PBytes
・単一の演算ではないのでユニプロセッサによる並列は向かない
・ある分野に特化したプロセッサを含む、ヘテロなノードを多数高速のインターコネクトで結んだクラスタ
・あるいは、ある分野に特化した演算クラスタを高速なインターコネクトで結んだ複合システム
ここから、平成17年度1Qあたりにかけて、スパコン使いそうなところにヒアリングをしている。
そして、2005年7月15日に10ペタ超のスパコンを目標とすることに決まった。「汎用京速計算機」!
http://www.mext.go.jp/b_menu/shingi/gijyutu/gijyutu2/007/shiryo/05082601.htm
この辺からベクトルか、スカラーか、複合かみたいな話が出てくる。
http://www.mext.go.jp/b_menu/shingi/gijyutu/gijyutu2/007/shiryo/06020103.htm
で、2006年2月に推進体制が決まる。
http://www.mext.go.jp/b_menu/shingi/gijyutu/gijyutu2/007/shiryo/06030711.htm
・文科省の資料
「次世代スーパーコンピュータプロジェクトの概要」
このときすでに総予算額は概算で1100億円とはじき出されていた。
まだアーキテクチャも確立していないのに。。。
で、少し期間をおいて、「次世代スーパーコンピュータ作業部会」に引き継がれる。
http://www.mext.go.jp/b_menu/shingi/gijyutu/gijyutu2/027/shiryo/08012313.htm
このときはベクトル・スカラ複合型で作ると書かれている。
しかし、ここで同時に箱ものが出てくるのだ。。出た。。
神戸のポートアイランドにデータセンターを新規に建設するのである。
(建物は2010年5月に向けて着々と建設中!)
埋立地にスパコンを置いて大丈夫なんだろうか。
ちょっと国の危機管理体制を疑うな。。
で、2009年に入ると「次世代スーパーコンピュータプロジェクト中間評価作業部会」というのができるのだが、これがまた、一切非公開。何が行われているのか、議事録でもさっぱりわからない。。
ここでおそらく、いろいろトラブルが発生したのではないかと思われるが、それも闇の中。
http://www.mext.go.jp/b_menu/shingi/gijyutu/gijyutu2/039/index.htm
で、2009年5月にNECが撤退する。
http://www.nec.co.jp/press/ja/0905/1402.html
で、その後、アーキテクチャの変更(スカラOnly)が明らかになるのはおそらく、この仕分け会議の資料で初めてじゃないだろうか。
どこかに公に言及している資料があれば教えてほしいのだが。どなたかしりませんか?
http://www.cao.go.jp/sasshin/oshirase/pdf/nov13-am-shiryo/07.pdf
※ありました、ありました。北陸先端技術大学のHPに中間評価報告書が。
http://www.jaist.ac.jp/cmsf/meeting/14-3.pdf
http://www.jaist.ac.jp/cmsf/meeting/014.html
【よくわからない点】
・スカラOnlyでもできるという根拠がわからない。複合型をなぜやめたのか。
(スカラでないとできないとわかったためか、NECが撤退したからなのか、その両方なのか)
→中間報告書にNECと日立が撤退したため&スカラ単一でないとできないと記載されていた。
・なぜ神戸、しかもポートアイランドという埋立地に建てるのか。
(土地がただだからというだけでは納得できませんね。。だって国の根幹事業を担うスパコンなんですから。地方活性化のためですかね?)
・建物にはいくらかけるのか(いかにも高そうな建物ですが)。
・プロジェクトは現時点ではうまくいっているのか、いないのか。
(これほど大きなアーキテクチャ変更があって、うまくいっていると言えないでしょうに。。。)
→中間報告書を読むと、見直しが必要と書いてありますね。
・費用は適正か。必要以上にお金を使ってないか。
(これがまた、細かい資料は公開されてないんですよね。。。)
・「(仮称)計算科学研究機構」というスパコンを運用する特殊法人?を設立しようとしているが理化学研究所内ではだめなのか?